東西線の車両

総論

東西線はJR東日本と東葉高速鉄道と相互直通運転を実施しているため、東京メトロの車両だけではなくJR東日本や東葉高速鉄道の車両も乗り入れている。東京メトロの車両は3車種、JR東日本と東葉高速鉄道は各1車種見ることができるが、このうち東京メトロの05系は1994年で一旦製造が打ち切られた後1999年に製造再開された際、大幅な刷新を行っているため別形式のように扱われることが多い。

東西線車両は快速列車で高速運転を行うため、高速運転に対応したスペックが要求される。加えて南砂町駅東方の地下区間と地上区間の切り替え地点では、35‰の勾配が500m以上にわたり続くため、登坂能力だけでなく当該箇所で立ち往生した編成を移動させるスペックが要求される。JRの車両は地上の平坦線に合わせた設計で電動車の出力が小さいが、東西線用の車両では電動車の比率を高めることで対処している。

営団地下鉄及び東京メトロは、日比谷線3000系以降、世代ごとに付番法則が存在し、特定路線ごとに特定の番号を車両形式に継承する慣習があり、東西線では伝統的に「5」が用いられている。これは東西線が5号線にちなむものと思われがちだが、実際は日比谷線の3000系で4000番台も使ったため。07系がいるが、これは有楽町線の第2世代の車両として登場したものの、変則的なドア配置を採用したためホームドアに対応させることができず転属を余儀なくされたため。当時はホームドアの技術が発達途上で、東西線で採用されたような大開口ホームドアの開発はさらに後年まで待たなければならなかった。

05系と15000系
有楽町線から転属した07系
地下鉄用に電動車を増やしたE231系

車両運用

運転区間はメトロ車は東西線、JR線、東葉高速線の全線を走行できるが、搭載機器の都合上JR車は東葉高速線に、東葉車はJR線に入線することはできない。そのため平日の朝晩を中心に運転される三鷹~東西線~東葉勝田台の3社直通列車はもっぱらメトロ車のみ運用に入る。

メトロ車と東葉車は、当日中に自社線の車両基地に戻らずに夜を明かす外泊運用が存在するが、JR車は全て三鷹に戻り、メトロ車もJR線に残らない運用になっている。大規模な輸送障害が発生し、終日中央線への直通運転が中止された場合でも、JR車が東西線内に取り残されている場合は例外的に三鷹行きを運転して必ず車両基地がある三鷹へ戻される。同様に中央線内にメトロ車が取り残された場合も、例外的に直通列車を仕立てて東西線へ戻される。

そのほか直通運転中止の場合について、総武線との直通運転が中止された場合、すでに総武線に入っている列車は津田沼でそのまま折り返し東西線に戻る。取り残されたのがJR車であっても、秋葉原経由で三鷹へ回送するようなことは行われない。東葉高速線との直通運転が中止された場合は西船橋で乗り換えとなるが、この場合東葉高速線は西船橋では8番線で折り返すことが多い。

各社の車両運用は運行番号とそれに付属するアルファベットで区別することができ、メトロ車は02および13~99の奇数とS、JR車は01~11の奇数とK、東葉車は50~68の偶数とTで区別される。それぞれ、Subway、Kokutetsu、Toyoの頭文字だ。ただしJR線で列車番号を表示する場合、末尾のアルファベットは車両の所属会社ではなく東西線内の列車種別を区別するアルファベットに置き換えられる。東西線内で快速または通勤快速となる列車は「A」、各駅停車となる列車は「Y」である。

列車番号

東西線、東葉高速線、JR線とも、運行番号に当該列車の始発駅の発車時(24時間制)を冠する「冠発時方式」を採用している。

東西線・東葉高速線

東西線及び東葉高速線では、始発駅の発車時(24時間制)と運行番号を組み合わせ、さらに列車の進行方向を示す符号を冠する。加えて、快速列車は末尾に「R」をつけたす。例えば、中野駅を13:43に発車する東葉勝田台行きは、運行番号が21Sで、列車の進行方向は西船橋方面(=A線)、また列車種別は快速なので、「A1231SR」となる。

JR線

JR線内では、始発駅の発車時(24時間制)と運行番号を組み合わせる点では共通しているが、末尾のアルファベットは先述の通り東西線内の列車種別を区別するアルファベットに置き換える。また列車の進行方向は奇数、偶数で区別する。通常JR線の列車番号は、下りが奇数、上りが偶数という法則があるが、都心を貫通する中央・総武線は中央線を基準にし三鷹方面が運行番号である奇数、千葉方面が運行番号から1を減じた偶数となる。

例えば、三鷹を17:08に発車する快速津田沼行きは、始発駅である三鷹駅を17時台に発車し、運用はJR車の03K運用、方向は千葉方面で東西線内の列車種別は快速であることから、「1702A」となる。東西線内では列車番号が変わり、始発駅である三鷹駅の発車時、運行番号、進行方向を組み合わせて「A1703K」となる。JR線直通列車の場合、例外的に「R」は末尾につかない。西船橋から先の総武線内は、再び「1702A」として津田沼まで走る。

車両基地

東西線の車両基地は沿線に2か所あり、東陽町駅から引き込み線が延びる深川車両基地、妙典駅から引き込み線が延びる深川検車区行徳分室がある。

深川車両基地

東京都江東区に所在。車両留置や日々の検査を行う深川検車区と、大規模な車両修繕を行う車両工場である深川工場を備える。東西線を走るメトロ車は全て当検車区に車籍を有しており、工場共々東西線の列車運行を支える重要な拠点である。

深川検車区

車両留置及び東西線車両の月検査、車輪転削、車両清掃を担う。留置能力は最大で33本。14番線から19番線は有効長が長く、2編成を縦列留置することができる。

深川工場

東西線車両の重要部検査、全般検査を担当。メトロ車だけでなく、東葉車も東葉高速鉄道から受託している。5000系の東葉高速1000形改造や07系の転属改造などの実績もある。なお工場の処理能力の問題か、07系の一部は新木場工場で行われた。その際中野~綾瀬間は甲種輸送が行われた。

車両基地で塩浜通りに面する線路(47番線)は工場線で、修繕車両の移動や試運転などに使用される。

深川検車区行徳分室

東西線全線開通時に下妙典留置線として供用開始。1981年に行徳検車区に改組し、深川検車区と共に車両の月検査などをおこなうが、2009年に深川検車区と統合され下部組織となった。現在も車両の検査業務を行っている。留置能力は最大で15本。うち2番線と8番線は有効長が長いが、2B番線は車輪転削線、8B番線は保守用車専用のため車両の留置は行われない。また3番線は7両分しかなく、4番線は保守用車専用のため架線が張られていない。

車両紹介

05系

老朽化した5000系の置き換えと輸送力増強を目的に1988年に登場した。幾度か仕様変更が行われているため、製造時期によって仕様に相違がみられる。中でも14~18Fの5本はドア幅を500mm拡大したワイドドアを採用し、混雑緩和を狙った。24Fは廃車された5000系の車体をリサイクルして製造した部品を使用した「アルミ・リサイクルカー」として製造され、その旨を示すロゴマークが貼り付けされている。

N05系

5000系の未更新車が​全て廃車されたことにより、05系の量産は24Fをもって一旦終了していたが、1999年よりマイナーチェンジをした車両が導入された。スピード感を強調するためライト回りがシャープなデザインになり、従来の05系にはなかった排障器(スカート)が製造当初より装着されている。外観が大きく変化したことから、「N05系」などと呼ばれるが、正式には05系であり、車両番号も24Fからの続番で製造されている。

07系

1993年に有楽町線の増発用として、翌1994年の有楽町新線と西武有楽町線開業に備えて合計6編成製造された。乗務員室を広くするためにドア配置が変則的なのが特徴。しかしホームドアの運用に支障をきたすため、2006年に残存していた5000系の置き換え用として2次車4本が東西線に転属。残る1次車2本も少し遅れて東西線に転属した。

15000系

朝ラッシュ時の混雑が激しいことを受け、2010年に登場した車両。すべてのドアを幅1800mmのワイドドアとし、乗降時間短縮を狙っている。また、東西線の車両では初めて各ドア上に17インチの液晶ディスプレイを2台ずつ設置し、充実した旅客案内や動画広告を提供している。

2011年までに13編成用意され、05系の初期車を置き換えた。その後2017年に3編成増備されている。

E231系800番台

2003年に登場したJR東日本からの乗り入れ車両。老朽化した301系・103系の置き換えを目的に10両編成7本が製造された。

東西線の乗り入れ条件を満たすため、中央・総武線の0番台などとは異なり狭幅車体を採用し電動車比率を高めていることが特徴。常磐線の209系1000番台と類似したフロントマスクだが、列車番号をフルで表示(JR線内のみ)したり、行先表示器、列車番号表示器回りが黒く塗られているといった相違点がある。

2000系

2004年に登場した東葉高速鉄道からの乗り入れ車両。開業時に用意された1000形は営団5000系からの改造車であり、老朽化が進行していたためその置き換えを目的に導入された。

製造コスト削減のため、基本スペックはN05系13次車に準じているが、千葉県の花、なのはなをモチーフにしたカーテンや沿線の緑をイメージした座席など独自要素も多い。また東西線を走る車両で唯一青系の装いではない。