経緯
東京メトロ東西線は、中央線及び総武線のバイパス線として開業し、特に現在の地上区間である南砂町~西船橋間は、東西線全通同時都心に近いながらもアクセスが悪く、農漁村地帯で人口が少なかった。しかし東西線の開通によって都心まで直接アクセスできるようになり、特に地上区間において沿線人口が一気に増加。2019年度の統計では、平日朝ラッシュ時の混雑率が200%に迫る程にまで混雑が悪化しており、混雑緩和は営団地下鉄、東京メトロにとって悩みの種であり、解決すべき課題であった。
そこでかつての営団地下鉄は、05系の14編成から18編成の5編成を、ドアの幅を50㎝拡大したワイドドア車両に仕様を変更し、スムーズな乗降を実現させ乗降時間短縮を狙った。同時期、日比谷線の03系ではドア数を片側3か所から5か所に増やした車両が投入されていたほか、山手線や京浜東北線でもドアを増やした車両が投入されたが、東西線では特定の車両が混雑していることではないことから、すべての車両のドア幅を拡大する方策がとられた。しかしドアの幅を拡大した分、座席数の減少を招いたこと、またドア幅を拡大した分の時間短縮効果が得られなかったとして、05系の19編成以降ではドア幅は通常の130㎝に戻された。
その後営団地下鉄が民営化し東京メトロに移行して以降もATC装置の更新や、平日朝ラッシュ時間帯の平行ダイヤ導入、時差通勤を促す早起きキャンペーン、さらには一度取りやめとなったワイドドア車の再投入などを実施したが、混雑の抜本的な解決にはならなかった。2010年代当時日本全体ではすでに少子高齢化になっていたが、東京近郊の人口は2020年以降も増加し続ける推計になっていたことから、東京メトロは設備の抜本的な改良を決めた。
4つの抜本的な工事
東京メトロが改良を決めた工事は4か所。それぞれ列車の運行を維持しつつ、列車運行のない深夜に少しずつ作業が行われているが、想定外の事態が発生するなどしていずれも工期が大幅に伸びている。
飯田橋~九段下間連絡線工事
九段下駅の飯田橋方にある側線を飯田橋駅に接続し、かつ九段下駅の飯田橋方にある渡り線を移設して三線化する工事。飯田橋駅で折り返した列車と後続の中野方面行き列車が当区間ですれ違うことで、さらなる列車の増発を見込む。
詳細は飯田橋~九段下間連絡線工事へ。
茅場町駅改良工事
ホーム西船橋方にある日比谷線中目黒方面ホームへの乗り換え階段の混雑を緩和するため、ホームを西船橋方に約40m延伸し、中野方面行き列車の停車位置をホーム延伸した分後退させる。また日比谷線ホームへの導線を増やし、混雑緩和をする工事。同時にエレベーターの設置や日比谷線ホームも含めて内装のリニューアルも実施される。
詳細は茅場町駅改良工事へ。
木場駅改良工事(休止中)
ホームの中野方約70mに渡り、地上から掘削して既存のシールドトンネルを解体、ホーム及びコンコースを拡張して混雑を緩和させる工事。
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南砂町駅改良工事
駅南側にホームと線路を1面1線増設し、2面3線構造にするほか、東西に分かれていた改札口を1か所に集約、コンコースを拡張する工事。
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東西線と豊住線(有楽町線延伸線)
豊住線は、東京都江東区の有楽町線豊洲駅から、同半蔵門線住吉駅までを結ぶ、約5.2㎞の路線。2000年の運輸政策審議会答申第18号において、豊洲~野田市を2015年までに整備着手することが適当とされた。このうち住吉~押上間は2003年に半蔵門線の延伸線として開業しているが、残りの区間は東京メトロが副都心線を最後に新規の路線建設を行わない方針を固めたことから、長らく凍結状態にあった。
ところが東京メトロは、2022年3月に豊洲~住吉間の第一種鉄道事業の許可を得て、同区間の建設が行われることになった。同時に、南北線の延伸線(白金高輪~品川)の第一種鉄道事業の許可も得ている。
東西線とは東陽町駅で接続する予定で、バス交通に頼りがちであった臨海部や錦糸町方面へのアクセスが大幅に向上する。また東西線の混雑緩和に寄与することも期待されている。
詳細は豊住線へ。